ささやかな絵本の絵描き~いわさきちひろさんの『ラブレター』より
いわさきちひろさんのやさしい絵。シンプルな線や淡い色遣いが好きです。
東京の上井草の「ちひろ美術館」にはときどき行っていたのですが、しばらくご無沙汰気味です。
いまもあるのかわからないのですが、ちひろ美術館の1階にちひろさんの書斎を再現したコーナーがあって、その壁に書かれている、ちひろさんの言葉が好きです。
私が力がなくて無力なとき(いつもそうなのだろうけれど)、人の心のあたたかさに本当に涙ぐみたくなる。
この全く勇ましくも雄々しくもない私のもって生まれた仕事は絵を描くことなのだ。たくましい、人をふるいたたせるような油絵ではなくて、ささやかな絵本の絵描きなのである。
そのやさしい絵本を見たこどもが、大きくなってもわすれずに心のどこかにとどめておいてくれて、何か人生のかなしいときや、絶望的になったときに、その絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして心をなごませてくれたらと思う。
それが私のいろんな方々へのお礼であり、生きがいだと思っている。
[いわさきちひろ、『ラブレター』より]
絵本は子どもときにも読んでいましたが、子どものときに読んでいた絵本はいとこにおさがりとしてあげていて、手元には1冊も残っていないのですが、大人になってから再び好きになった絵本。その都度絵本に助けられてきたかもしれないと思っている自分にとっては、ちひろさんの言葉はココロに響きます。
その言葉が載っている本が、ちひろさんの『ラブレター』です。
そんなちひろさんが、好きな人に対して情熱的な気持ちを抱いていたことが、この『ラブレター』を読むとわかります。
「三十年来私はこんなに人を愛したことはないもの。彼がいなくては絵がかけない・・・」 恋しい夫を待ち続けるちひろは、ノートに思いのたけを書き綴る。ほとばしる感情は、愛に革命に揺れ動くちひろの秘められた熱情。
(「ラブレター」の「第一章 愛するとき」の説明文より)
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