武蔵野の面影~国木田独歩さんの『武蔵野』

>

国木田独歩さんの本は、いまはオンラインストアに登録しておりません。


国木田独歩さんの『武蔵野』。
好きな本で何度か読みなおしています。日記形式でこんなくだりがでてきます。

自分は二十九年の秋の初から春の初まで、渋谷村の小さな茅屋に住で居た。(中略)
九月七日 ―「昨日も今日も南風強く吹き雲を送りつ雲を払ひつ、雨降りみ降らずみ、日光雲間をもるるとき林影一時に煌めく、―」
[国木田独歩、『武蔵野』より]

渋谷村とあるのは国木田独歩さんが住んでいたNHK放送センターの東側あたり。渋谷が武蔵野の面影を残していた頃に憧れます。サッと光が差し込む美しい雑木林を想います。

この本の中に、ツルゲーネフさんの『あいびき』の文章が引用されていて、空と雲の記述が素敵です。

秋九月中旬というころ、一日自分がさる樺の林の中に座していたことがあッた。今朝から小雨が降りそそぎ、その晴れ間にはおりおり生ま煖かな日かげも射して、まことに気まぐれな空合い。あわあわしい白ら雲が空ら一面に棚引くかと思うと、フトまたあちこち瞬く間雲切れがして、むりに押し分けたような雲間から澄み怜悧し気に見える人の眼のごとくに朗かに晴れた蒼空がのぞかれた。
[イワン・ツルゲーネフ、二葉亭四迷訳 『あいびき』より]
(怜悧し気に=さかしげに)

ありありとその光景が思い浮かぶかのようです。
「あいびき」は読んでみたいと思っているのですがまだ読めていません。光景がありありと思い浮かぶかのようで全編読んでみたくなります。

武蔵野の面影を感じるところの1つに国立の一橋大学があります。キャンパスが道を隔てて2つありますが、講堂のある西側のキャンパスの西のはずれに、武蔵野の面影を残す雑木林があって、そこを抜けたグランド沿いの小径はとてもいい雰囲気です。




よろしければシェアをお願いいたします

コメント

コメントする

目次