舟越保武さんの『石の音、石の影』
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「アトリエに置いてある大理石が、汗をかいていた。」という書き出しで始まる「石の汗」の章。
上野の西洋美術館にミロのヴィーナスが来て、大勢の入場者で、人いきれがして、会場は蒸し暑くなっていた。
ヴィーナスの周囲に設けられた特別の通路に列を作って、押すな押すなで、観客は立ち止って見ることもできないほどだった。列に従って歩いて、ヴィーナスの正面に近づいたとき、私は、あの水滴を見た。
大理石のヴィーナスの頬にふき出た水滴が、雫になって流れた。頬をつたわって、豊かな胸にはしった。それが一筋の線になって光った。
欠けた腕の下からも、水滴の走るのが見えた。 わき腹から腰へ走って消えた。
思いも寄らない肉感がヴィーナスによみがえって見えた。水滴の原因がわかってはいたが、このときも感動した。
(『石の音、石の影』より)
大きく見え方が変わってしまったり影響されてしまうことには、ほんのささいなことが、小さなできごとがきっかけかもしれないと思います。
舟越さんは大理石の彫刻を作る方なのですが、こんなくだりがあります。
「大理石をローソクの灯りで見ると、妖しい美しさがある。
完成したばかりの大理石の頭像を、電灯を消してローソクの灯りだけで見ると、顔の部分のかげが、かすかにゆれて表情が動いて見える。」
揺らめくローソクの灯り。このくだりを読むと、奈良の新薬師寺の十二神将を思いだします。薬師如来さまを守る十二神将はローソクの光に照らさせてより立体感が増し、まさに動きだしそうな迫力です。この十二神将のことはまた今度話題にできればと思っています。
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